[コラム]ペットの治療費

以前,ペットが他人の故意または過失行為で死亡した場合の慰謝料について触れましたが,それを書きながらふと気になったことがありました。
ペットが他人の故意または過失行為で受傷した場合に,その(相当な)治療費は損害として満額認められるのか,という点です。

これが人間であれば,相当な治療費は原則満額が損害として認められます。
しかし,以前も書いたように,ペットは民法上「物」と同様に扱われます。
そして,物損の場合,修理費がその物の客観的価値を超えるケースでは,損害額として認められるのは客観的価値にとどまるとされているのです(経済的全損と言ったりします。)。

簡単にいえば,修理費用 > 買い替え費用 の場合,買い替えた方が経済的ですよね,というわけです。

もちろん,ペットの特殊性に鑑みれば,とても納得のいく話ではありません。私の感覚としても,これはさすがに妥当な結論ではないと感じます。

そこで,少し調べてみたところ,以下のような事例での裁判例がありました(平成20年4月25日名古屋地裁)。

・受傷したのは犬(ラブラドールレトリーバー購入価格6万5000円)
・治療費合計約150万円
・介護を要する重度の後遺症

この事例で判決は,治療費のうち約75万円を損害として認定しました。
犬の購入価格から考えれば,損害に該当する治療費として認められた額は,事件当時の犬の客観的価値を大きく超えているものと思われます。つまり,ペットの場合,経済的全損という考えは採用していないと考えていいでしょう。ペットに,単なる物とは異なる特別な価値を認めてのことだと思われます。

もっとも,判決は,治療費の一部を損害として認めない理由として,本件の犬が愛玩用動物に過ぎないという点や,65000円という購入価格をあげています。
当たり前の話ではありますが人間とは扱いが違うということ,そしてペットとしての価値によっても扱いが異なりうることを示唆しているわけです。
世知辛い話ですが,この辺はやはり物と同様に考えているのでしょうね。

ちなみに,本件では慰謝料として,飼い主二人合計すると80万円が認められています。
少し高めなのは,献身的な介護が認められてのことのようです(それでもこの程度かと思わざるをえないですが。)。

以上のように,他人の故意・過失行為によりペットが受傷した場合,治療費としてある程度の賠償は見込めますが,ベストな治療をするに十分な賠償が得られるかどうかはわかりません。ペットを飼われている方は(私を含め),ペットが事故に遭わないよう十分な注意が必要です。

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2018年10月19日